マンションの媒介契約は「専属専任」媒介契約を選ぶべき3つの理由

「媒介契約って何?」
「どんな違いがあるの?」
「結局どの媒介契約が良いの?」
プロ仲介マンがお答えします!
※なお、この記事はマンションに限らず「一戸建て」「土地」を売却するときも同じです。
その不動産会社に、「わたしのマンションの売却をお願いします」という意味で「媒介契約」を結びます。ただ、この媒介契約には3種類あり、それぞれルールが異なります。
そのため、「どの媒介契約を結べば良いか分からない」という人が多いです。今回は、そんな疑問に答えるために、媒介契約3種類について解説します。
その上で、専属専任媒介契約を結んだ方が良い理由を3つ解説します。
媒介契約の違いを解説
まずは、3種類ある媒介契約の「違い」を理解しておきましょう。以下のように、4項目において違いがあります。
— | 一般 媒介契約 |
専属専任 媒介契約 |
専任 媒介契約 |
---|---|---|---|
不動産会社数 | 複数社へ依頼 | 依頼は1社のみ | 依頼は1社のみ |
レインズ登録 | 義務なし | 義務あり (契約後5日以内) |
義務あり (契約後7日以内) |
売却報告 | 義務なし | 義務あり (1週間に1回以上) |
義務あり (2週間に1回以上) |
自己発見取引 | 問題なし | 一部負担の可能性あり | 満額負担 |
ちなみに、この記事では、上記の「専属専任媒介契約」と「専任媒介契約」の両方を指して「専任系媒介契約」と表記します。
先に言っておきますが、この記事では「専属専任媒介」をおススメしています。ただ、「専任媒介」でも大きな問題はありません。要は、「一般媒介は避けようね」という話です。
「専属専任媒介」と「専任媒介」で、なぜ「専属専任」の方が良いかを早く知りたい方はコチラ※画面内をスクロールします
また、それぞれの「媒介契約書」の中身を詳しく知りたい方は、近畿レイズが出典している「一般媒介契約書」「専属専任媒介契約書」「専任媒介契約書」のフォーマットを確認ください。
ただ、このフォーマットはツラツラと文言が載っているので、興味ある人だけで大丈夫です。
・一般媒介 http://www.kinkireins.or.jp/baikai/pdf/baikai_ippan.pdf
・専属専任媒介 http://www.kinkireins.or.jp/baikai/pdf/baikai_senzoku.pdf
・専任媒介 http://www.kinkireins.or.jp/baikai/pdf/baikai_sennin.pdf
不動産会社数
不動産会社数とは、「マンションの売却を依頼できる」不動産会社数のことです。
一般媒介契約は複数社と媒介契約を結べますが、専任系(専属専任媒介&専任媒介)媒介契約は1社のみしか媒介契約が結べません。
つまり、専任系は自分のマンションの売却を1社にしか依頼できないということです。それだけを見ると、「複数社に依頼できる一般媒介契約の方が売りやすいのでは?」と思う人もいるかもしれません。
しかし、実はこの「1社にしか依頼できない」という点が、専属専任媒介契約を選ぶべき理由です。この点は、後ほど詳しく解説します。
レインズ登録
そもそも、レインズとは不動産会社のみ閲覧できるネットワークシステムのことです。レインズには、以下の2つの情報が掲載されています。
- 過去に成約した事例
- 現在売り出している物件
一般媒介にはレインズ登録義務はありませんが、専任系媒介契約には義務があります。
レインズに登録すると、別の不動産会社に自分のマンションが売り出し中であることが告知できます。
つまり、色々な不動産会社から検討者を紹介してもらえるということです。そのため、レインズに登録するメリットは大きいです。
ちなみに、不動産会社以外でもレインズに近い情報を見られる REINS Market Informationがあります。
このサイトは査定時に見ておくと便利です。ちなみに査定についての記事はこちらを確認ください。
関連記事マンションを「高く・早く」売却するためには一括査定サイトがベスト売却報告
売却報告とは、具体的には以下のような内容です。
- 電話やメールなどの問い合わせ数
- 見学予約数やキャンセル数
- 検討者の進捗状況
これらの売却報告義務は、一般媒介にはありません。専属専任媒介は1週間に1回以上、専任媒介は2週間に1回以上の売却報告が義務付けられています。
当然ながら、進捗状況を聞けるので売却報告があった方が良いです。
自己発見取引
自己発見取引とは、「売主自ら買主を見つけてきた場合」の取引のことです。自己発見取引したときに、売主が不動産会社に支払うべきお金は以下のようになります。
- 一般媒介:ペナルティなしで解除できる
- 専属専任媒介:仲介手数料は満額支払う
- 専任媒介:投下した広告費は請求されるかも
そもそも、自己発見取引はほぼありません。知人や友人がたまたま「買いたい」と直接言ってきたときくらいでしょう。
また、自分で買主を見つけてきても、重要事項説明書の作成や売買契約書の作成は素人ではできません。
そのため、結局は不動産会社に依頼するか、司法書士に手伝ってもらうことになります。なので、自己発見取引はあまり気にしなくて良いでしょう。
- 媒介契約ごとに「不動産会社数」「レインズ登録」「売却報告」「自己発見取引」に違いがある
- 特に違う点は、一般媒介は複数社に依頼可能で、専任系は1社のみしか依頼できない
- 結論をいうと専属専任媒介の方が良い
理由1:広告費を投下できる
さて、媒介契約ごとの違いが分かったところで、いよいよ専属専任媒介を選ぶべき「理由」についてです。
専属専任媒介契約を選ぶべき1つ目の理由は、「広告費を投下できる」という点です。この理由が、専属専任媒介にするべき最も大きな理由でしょう。
広告費は誰が支払う?
マンションなどの不動産売却時には、「チラシ」や「ネット」などで広告をします。チラシであれば紙の印刷費や投かん料がかかりますし、ネットも掲載料がかかります。
これらの広告費は、仲介を担当している不動産会社が支払うことになっているのです。
しかし、不動産仲介を専業としている不動産会社は、原則「仲介手数料」しか収益がありません。その仲介手数料は、マンションの売却が完了しないと売主・買主からもらえないお金です。
そのため、せっかく広告してもマンションが成約できないと、「広告費だけ支払って仲介手数料がもらえない」という事態になります。
専任媒介契約が広告投下しやすい理由
結論から言うと、専任媒介契約であれば、自社で成約できる可能性が高いので、一般媒介よりも広告を投下しやすいです。
一般媒介契約は、売主が複数の不動産会社に「マンション売却」を依頼しています。ということは、たくさん広告をしても別の不動産会社が成約してしまう可能性が高いです。
そのため、一般媒介契約だとあまり派手に広告投下が出来ないので、不動産会社は広告を絞ります。そうなると集客が減るので、中々マンションの売却ができないということになります。
一方、専属専任媒介であれば、自社以外に仲介している不動産会社はいません。そのため、たくさん広告をしても、「別の不動産会社が先に成約する」という心配はないのです。
- マンション売却時の広告費は不動産会社が負担する
- 一般媒介契約は他社が成約するリスクがあるので広告をあまりしない
- 専任系媒介契約は他社に成約するリスクがないので広告をたくさんする
理由2:人件費をかけられる
専任系媒介契約を選ぶべき2つ目の理由は、「人件費をかけられる」という点です。人件費がかけられるとは、「営業マンが1つの物件の売却にパワーをかけられる」ということです。
つまり、営業マンがあなたのマンションを売るために必死に営業活動してくれるので、マンションを高く・早く売却しやすいということです。
営業マンの仕事とは?
そもそも営業マンは、マンションを売却するために以下のようなことをします。
- 費用対効果の良い広告を作成&実施
- マンション見学の問い合わせを受ける
- マンション見学の日程調整&案内
- 検討者への交渉
- 申込受付&売買契約の締結&引渡し業務
つまり、営業マンが見学者を集客し、接客&交渉し、さらに売買契約締結から引渡しまで、全ての業務を行うということです。
そのため、営業マンが必死で営業活動するかどうかは、マンション売却成功の鍵を握っています。
人件費をかけるメリット
人件費をかけることができれば、「1人の営業マンが受け持つ物件数」を少なくできます。
たとえば、営業マンAが5物件担当していたとしましょう。5物件担当しているということは、5物件の広告を打つ必要があり、5物件分のマンションの見学希望者から問い合わせがきます。
マンション見学は土日に集中しがちなので、この5物件のうち見学日程が被ってしまえば、どれかの物件の見学は先送りになります。
一方、営業マンが3物件担当であれば、5物件担当しているときよりも、1つの物件に注力できます。
じっくりと費用対効果の高い広告を考えられますし、マンション見学の日程が被るというリスクも小さいです。そのため、結果的に集客が増え、マンションを高く・早く売りやすくなるのです。
わたしも、たくさんの物件を同時に担当したことがあります。ただ、営業マンはやることがたくさんあるので、1つの物件にかけられるパワーは明らかに小さくなります。
正直、一般媒介と専属専任媒介であれば、専属専任媒介を結んでいる物件の売却を優先してしまいます。
- 専任系媒介契約は人件費をかけられる
- 人件費をかけられれば営業マン1人の担当物件が少なくなる
- 営業マン1人の担当物件が少なければ、1つの物件を必死に売る
理由3:売却報告は意外と重要
専任系媒介契約を選ぶべき3つ目の理由は、「売却報告は意外と重要であるから」という点です。
一般媒介では売却報告義務はないので、多くの不動産会社は売却報告を積極的にしません。ただ、全くしないとクレームが入りやすいので、月に1~2度サラッと報告はします。
一般媒介契約の報告
わたしも全ての会社の売却報告を知っているワケではありませんが、専任系に比べると、一般媒介の売却報告の方が適当です。残念ながらこれは事実です。
たとえば、専任系の売却報告なら
- 正確な問い合わせ数の報告
- 問い合わせが少ないときの対応
- 検討者の状況、クロージングまでのプロセス
- 今後の広告戦略とその理由
のように、かなり詳しく売却報告をします。
一方、一般媒介の場合には、単に数字を羅列してメールを送って終わりです。そもそも、一般媒介には「売却報告義務」はないので、売却報告しない営業マンもいます。
しかし、マンション売却は、競合環境や市況によっては、媒介契約が切れる期限(大体3か月)までに売れないこともあります。
そのとき、専属専任媒介契約を結んでいると、不動産会社は「仲介手数料を稼げるチャンス」です。そのため、媒介契約の期限を迎えても、何とか「更新」したいのが本音です。
だから、売却報告を一生懸命して、売主に頑張っているアピール(言い方は悪いですが)をするというワケです。
売却報告は値下げの材料になる
なぜ、売却報告が重要かというと、将来的に値下げするときの材料になるからです。
もちろん、値下げなどせずに、売り出し価格のままで売却できた方が良いです。しかし、競合環境や市況が悪化して物件が売れなければ、価格を下げざるを得ないこともあります。
仮に価格を下げるとしたら、定期的に売却報告を受けているかどうかで「売主の納得感」は違います。
きちんとした売却報告を受けていれば、「なるほど。色々やってみて売れなかったから、値下げするのも仕方ないか・・・」となりやすいです。
一方、月に1~2度程度の適当な売却報告で価格を下げる提案をされても、「本当に下げる必要あるの?まだやれることあるのでは?」のような気持になります。
また、売却報告があるということは、見学者や検討者のデータが蓄積されているということです。そのため、マメに売却報告があった方がデータは多く、適正な価格に値下げしやすいのです。
- 売却報告は値下げの材料になるので意外と重要
- 専属専任の売却報告はキッチリ行い、一般媒介の売却報告は割と適当
- 定期的に売却報告を受ければ適正な値下げ価格になりやすい
専属専任媒介と専任媒介どちらが良い?
今まで専属専任媒介をおススメしていましたが、「専任媒介でも良い」とも言いました。この2つの媒介契約は似ていますが、結論は専属専任媒介の方が良いです。
ここで、一応この2つの比較を改めしておきましょう。
— | 専属専任 媒介契約 |
専任 媒介契約 |
---|---|---|
不動産会社数 | 依頼は1社のみ | 依頼は1社のみ |
レインズ登録 | 義務あり (契約後5日以内) |
義務あり (契約後7日以内) |
売却報告 | 義務あり (1週間に1回以上) |
義務あり (2週間に1回以上) |
自己発見取引 | 一部負担の可能性あり | 満額負担 |
専属専任媒介契約の方が良い理由は以下の通りです。
- 不動産会社のモチベーションが上がる
- 売却報告が1週間に1回
- 自己発見取引はほぼない
ただ、「どちらかというと専属専任媒介の方が良い」というレベルなので、あまり深く考えなくても大丈夫ですよ。
不動産会社のモチベーションが上がる
まず、不動産会社からすると、専属専任媒介契約の方が、多少ですがヤル気は出ます。
専属専任媒介と専任媒介は、売主からするとそこまで大きな違いはありません。そのため、逆に不動産会社からすると「専属専任で良いじゃん」と思うのが正直なところです。
つまり、売主に専任媒介を選択されてしまうと、「なぜ?専属専任で良いじゃん。信用されてない?」と思ってしまうのです。
売却報告が1週間に1回
また、専属専任媒介は売却報告が1週間に1回なので、専任媒介の2週間に1回よりマメに報告してくれます。
売却報告の大切さは先ほど伝えた通りなので、マメに売却報告を受けられる専属専任の方がベターです。
自己発見取引はほぼない
そして、マンションという高額な商品なので、売主自身が契約者を見つけてくる「自己発見取引」はほぼありません。
わたしは今まで500件以上の仲介に関わっていますが、自己発見取引の経験は0です。
仮に、売主が契約者を見つけてきたとしても、「重要事項説明書(重説)」や「売買契約書(売契)」の作成は、不動産会社や司法書士に依頼した方が良いです。
自己発見取引は「個人間の取引」なので、極論を言うと重説も売契も不要と言えば不要ですが、トラブルリスクは増します。
そのため、先ほども言いましたが、「不動産会社」や「司法書士」に、重説や売契作成の依頼をすることが多いです。
つまり、自己発見取引で契約者を見つけても、結局は自分達だけで売却は難しいということなので、専任媒介のメリットは少ないのです。
- 専任系であれば「専属専任媒介契約」の方が良い
- 不動産会社のヤル気が上がるし、売却報告も多い
- そして、自己発見取引はほとんどないので専任媒介のメリットは少ない
まとめ
「マンションの媒介契約は専属専任媒介契約が良い」という3つの理由は以下の通りです。
- 広告費を投下できるので集客しやすい
- 人件費をかけられるので営業マンが必死で営業してくれる
- 意外と重要な売却報告がマメにある
すごく簡単に言うと、専属専任媒介契約の方が、わたしたち営業マンも「やる気」が出ます。
ヤル気が出れば必死で営業するので、結果的に高く・早く売れるということです。
さて、媒介契約が終われば次は「売却活動」です。売却活動について詳しく知りたい方はコチラ。